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そのまんま東、当選の意味

07年01月23日

No.314

官製談合事件で逮捕・起訴された前知事の辞職に伴う宮崎県知事選挙が、昨日投開票されタレントの「そのまんま東」が当選した。同じ日に山梨・愛媛県知事選も投開票されたが、それらを比較してみるといろいろと面白いことが分る。まず3つの県知事選で民主党にはまったく出番がなかった。というより民主党は候補者擁立すらしなかった。これが日本の政権を本気で取ろうという政党として許されるのか、という疑問が生ずるのは私だけだろうか。政党にとっていちばん大切なのは信念と執念と迫力である。

安藤忠恕前宮崎県知事の逮捕・起訴は、福島・和歌山県知事の逮捕・起訴のダメ押しといえるものだった。宮崎県民にとってそれはいいようのない気持ちで受け容れなければならない事件だったと思う。このようなやるせない絶望的な状況の中で、希望の松明を高く掲げることができるのが、真の政治家であり真の政党である。そうでなければ政治家や政党は必要はない。勝敗は問題ではない。そうした姿勢や生き方が必要なのだ。最近の政治家や政党は成果だけにこだわりすぎるような気がしてならない。だからロマンや熱情が感じられないのだ。政治は勝敗に意味のあるゲームではない。ロマンや精神性も求められる、芸術にも通ずるものがある人間の営為なのである。

私はそのまんま東なるタレントの名前と顔は知っているが、それ以上のことはほとんど知らない。ちなみにそのまんま東の本名は、「東国原英夫」(ひがしこくばるひでお)だそうだ。今日の朝日新聞も読売新聞も一面トップで「そのまんま東氏」と書いているが、強いて敬称を付けたいのなら「さん」だろう。それはそれとして、このような次第だから、タレントとして超売れっ子という訳でもないだろう。だから出馬を決意できたのかもしれない。超売れっ子の場合、収入がガクンと落ちるのでけっこう難しいのだ。出馬の動機や決意がどのようなものであったのか私は詳細を知らないが、そのまんま東の出馬は宮崎県民の心を掴んだのだ。

政治家や政党は人の心を掴まなければならない。権力をもたない野党の場合は特にそうだ。それがすべてといいのかもしれない。松下政経塾出身の議員などにはテクニックとパフォーマンスばかりが目立ち、ロマンと精神性が感じられない。政党には打算や思惑が多すぎるような気がしてならない。党を絶対視する共産党ならいざ知らず、民主党などはもっと柔軟な思考や行動があってもいいように思う。共産党だって、もし党勢を拡張したかったらもっと柔軟な発想や行動をもたなければならない。そうでなければきっとますます先細りになるだろう。民主党が宮崎県において候補者を擁立する力がないのであれば、そのまんま東を推薦したってよかったと思う。

民主党は福島県知事選では、民主党所属の佐藤雄平参議院議員を擁立して勝利した。和歌山県知事選では候補者を確か擁立できなかったと記憶している。沖縄県知事選では野党統一候補として糸数慶子参議院議員を擁立して戦い、惜敗した。そのショックからであろうか、宮崎・山梨・愛媛県知事選では候補者を擁立も推薦もできなかった。合戦においては二の矢、三の矢を続けて放たなければ戦さにならない。二の矢が外れたからといっても三の矢、四の矢と放ち続けることが戦いなのである。知事選くらいは、政権を狙う政党ならば戦いを避ける訳にいかないだろう。

今日の新聞をみるといろいろな分析がなされている。正直にいってあまり意味がないと思う。そんな細かいデータでないのだ。野党特に第一党である民主党には、政党としての根本的な何かが欠けているのだ。そのことを克服しなければ政権獲得などとても無理であろう。では、その欠けているものとは一体何なのか。一言でいえば自公政権にこの国を委ねていたのでは、この国はダメになるし国民も救われないという断固とした信念であろう。その信念と確信があれば、一つひとつの戦いに対する執念が自ずと生まれるはずだ。もうひとつは謙虚さであろう。確かに民主党は野党第一党としてそれなりの力をもっている。少なくとも議席数からみれば他の野党を圧倒している。

しかしそれは小選挙区制が結果として与えてくれる議席でしかないことを肝に銘じ、自公政権に反対する国民を総結集するために粉骨砕身あらゆる努力をすることに尽きる。民主党に謙虚さがなければ、総結集など決してできない。そして民主党の勝利もない。この単純にして明快なことが、民主党にはなかなか理解できないようである。確かに民主党は衆議院で3分の2もの自公政権といつも国会で対決し厳しい結果に立たされている。そのためであろうか、冷静に国民の政治意識を理解することができなくなっているのではないか。現在の衆議院の議席など、小泉自民党が詐欺的手法で一時的に詐取したものと最初からなめてかかればいいのである。自公両党が推薦した候補は、3番手にしかなれなかったではないか。そのまんま東の当選から学ばなければならないことは実に多い。

それでは、また。

  • 07年01月23日 12時21分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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