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まず事実を把握せよ。

08年11月20日

No.996

白川勝彦法律事務所のことを書く時、私はいつも多重債務問題に関することに触れる。確かに多重債務問題は白川勝彦法律事務所の主要な仕事であるが、もうひとつの主要な仕事は刑事事件である。このところ刑事事件の受任が多い。多重債務で切羽詰っている依頼者の状態も深刻だが、刑事事件で訴求されている状態も被疑者・被告人のおかれている状況も深刻である。特に逮捕・勾留されている被疑者・被告人は、人生最大の苦境にあるのである。

刑事事件の弁護は、私は弁護士の原点だと思っている。若い時から刑事事件の弁護を引き受けると私はいつも全力を尽くして弁護活動を行ってきた。特に身柄事件(被疑者や被告人が逮捕・勾留されている刑事事件のこと)を受任すると、事務所は急に忙しくなる。接見や捜査当局との交渉のために、時間を割かなければならなくなるからだ。刑事事件の弁護は、法律論以前にまず事実関係を把握しなければならない。事実関係を把握するために弁護士は行動しなければならない。まず被疑者や被告人と接見しなければならない。現場を繰り返しみなければならない。関係者の話を丹念に聴かなければならない。

最近の刑事弁護に関する最大の話題は、来年5月から施行される裁判員制度に関することである。弁護士の間でも大きな問題となっている。平成海援隊BBSに裁判員制度に関する書込みがあったので、弁護士の立場から私は書き込んだ。親記事を掲載すると長くなるので、ここでは私の書込みだけを掲載する。親記事はここをクリックして欲しい。これに対する私の書込みだけを引用する。書込みで触れられている点について、特に私が注目していることのみに触れた部分的な見解である。

刑事裁判の由々しき現実と裁判員制度

> 日弁連では、最初はアメリカ型の陪審員制度(それも民事事件のみ)の導入を考えていたようですが,それでは裁判官が審理に参加できないので最高裁が強く反対したそうです。結局、妥協の産物が裁判員制度(刑事事件の一審のみ)だったようです。導入反対派ばかりか番組の後半には賛成派の中でも意見が変わり、司会の田原総一郎までも『問題が多いので、もういちど国会で話し合ってみたほうがいい』と言ってました。

 最近、日弁連から裁判員制度における弁護士の業務に対処するために、いろいろな勉強会の案内文書がFAXされてきます。模擬裁判をやって説明するからぜひ参加して下さいというものもありました。確りと勉強してもらっていないと弁護士の責任が追及される虞がありますので、少し焦っているのではないかという感じがします。

> 8)裁判員制度では、事前に公判前手続きが行われ裁判官の事前審理が行われており、陪審員より裁判情報に熟知している。さらに裁判員6名裁判官3名で行われる最終審理に置いて,結果として専門家の意見に影響されて裁判官主導で決められてしまわないか。
> 9)たった3日(最大5日)の参加では満足のいく審議ができるのか。

 たった3日(最大5日)の集中審理は、実際問題として弁護士にとって相当辛いですね。刑事専門の弁護士ならいざ知らず、3日(最大5日)の集中審理に対応することは相当の準備をしなければならないからです。争いのある事件では、どうしても公判廷で証人尋問をしなければなりません。検察官側の証人の証言を覆(くつがえ)すということは、綿密な準備をしておかなければそう簡単には成功しないのです。
 
 ドラマで見るほど証言を覆すことは簡単でないのです。証人尋問は地道な作業を伴うある種の職人芸なのです。高度な職人芸には、それなりの費用を払ってもらわなければそのスキルを期待することはできません。私選弁護では、弁護費用が高くなるでしょうね。国選弁護で過大な負担を弁護士に求めれば、国選弁護を辞退する弁護士が増えてくるでしょうね。

 現在でも経験豊富なベテラン弁護士は国選弁護を辞退している人がかなりいるのです。国選弁護の報酬は若い弁護士さんにとって“小遣い”程度にはなるので、国選弁護を一生懸命やっております。私も若い頃は国選弁護を一生懸命やりました。若い弁護士さんも優秀なのですが、証人尋問にはある種の“職人芸”が求められるのです。丹念な事実調査を行う時間が必要なのです。その結果ときには、クリーンヒットを飛ばせるという類の話なのです。

> さらに言うと、裁判員制度などより裁判で冤罪をなくす意味でも下部構造である捜査の可視化のほうがまず大事ではないでしょうか。下部がしっかりすれば、上部(裁判)も良くなっていくのではないでしょうか。

 おしゃる通りです。権力主義が横行する中で、警察官や検察官の捜査能力が非常に劣化しています。十分な証拠がないものですから刑事事件を依頼されると、私は全面的に争うことが多くなります。検察官には“合理的疑いを容れない程度に犯罪事実を立証する”義務があるのです。十分な証拠がない場合には、事実を争うことは弁護人の義務なのです。最近の刑事裁判では事実を争うと反省がないといわれるのです。これが刑事裁判の由々しき現実です。

刑事裁判にとっていちばん大切なことは事実関係の把握である。それは刑事事件をみる場合も同じである。テレビは元厚生事務次官の殺害・襲撃事件の報道一色であるが、まず事件の事実関係を正確に把握しなければならない。報道も同じである。捜査当局が発表する事実関係を正確かつ批判的に報道しなければならない。事実を正確に把握しないで思惑や予断に基づいて事件をみることは、厳に慎まなければならない。評価はその後である。ニューヨークの株式市場も大幅な下落である。こちらも深刻である。

それでは、また。

  • 08年11月20日 08時45分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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