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再可決に必要な憲法上の要件は?

08年04月18日

No.776

憲法59条2項の再可決について、改めて議論しなければならないと私は考えてきた。いつも紹介している平成海援隊BBSでこの問題が議論されていた。その中に主宰者ニライカナイさんの注目すべき書込みがあった。いつも疑問に思ってきたことに、私なりにひとつの方向性が見えてきた。これに関する私の考えはいずれまとめるつもりであるが、その基本的コンセプトは次の私の書込みに書いてある。ちょっと長いがぜひお読みいただきたい。

憲法の実体的要件

>私は衆議院の優越の根拠を憲法第四十五条「衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。」に、求める事が出来るのではないかと考えてみました。
>さて、それでは憲法は衆院の解散を何を目的に想定しているのでしょうか? それは、国民の意思と衆議院の意思が異なる事が想定される時に国民の意思を今一度問う事を想定しているのではないかと私には思えるのです。

以上のニライカナイさんのご意見、私には非常に示唆多いものです。

>国民の意思と衆議院の意思が異なる事が想定される時に国民の意思を今一度問う事を想定しているのではないかと私には思えるのです。

 この部分の「国民の意思と衆議院の意思が異なる事が想定される時に」ですが、“衆議院の意思”ではなく、“参議院の意思”というべきなのではないでしょうか。“参議院の意思”は、解散がないから次の選挙がないと変えられない。変えられない“参議院の意思”が国民の意思と大きく違ってきた場合には、解散総選挙によって改めて選出された“衆議院の意思”が新しい国民の意思として参議院の意思を変えることができるようにするために、憲法59条2項が設けられたのではないでしょうか。そうしないと国会の意思を決めることができなくなるからです。

 もちろん衆議院と参議院のふたつの意思が合致してはじめて“国会の意思”となる“参議院の意思”を否定することになる訳ですから、「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数」という厳しい条件が付けられたのです。この条件をクリアした場合に、はじめて法律の制定に関しても衆議院の優越的地位が認められる訳です。しかし、憲法改正の発議の「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」(憲法96条)という要件に比べれば、緩和されています。

 衆議院の解散が、「国民の意思と衆議院の意思が異なる事が想定される時に、国民の意思を今一度問う」ために行われることは事実です。しかし、解散総選挙によって選出された衆議院が直近の国民の意思を反映していることを理由に、衆議院に優越的地位を与えている訳ではありません。あくまでも「3分の2以上の多数」が優越的地位のよって立つ根拠です。

 法律の制定に関して、憲法は衆議院と参議院に同等の地位を与えています。基本的には優劣関係はありません。一般論として、衆議院であろうが参議院であろうが、直近の選挙で選出された議院が直近の民意を反映したものと考えることができます。だからといって、直近に選出された議院が優越しているという訳ではありません。選挙制度も違いますから、必ずしもそういえないことにも理由があります。あくまでも法律の制定に関しては、両院は平等対等です。

 しかし、法律の制定という国家の行為が、衆議院と参議院の意思がどうしても一致しない場合、国として困ったことが出てくることは想定できます。そういう場合を想定して規定されたのが、憲法59条だと私は思うのです。ここでいちばん大切なことは、あくまでも“国民の意思”です。国民の意思に基づいて法律は制定されなければならないということは、憲法の基本的な精神です。

 もちろん、“国民の意思”は現在の国民の意思です。一般論として過去の選挙よりも直近の選挙の方が、現在の“国民の意思”に近いといえるでしょう。しかし、必ずしもそういえるとは限りません。人も政党も、当てにはならないことが多々あります。直近の選挙で国民から多数の支持を得た政党が、国民の意思に反することも考えられます。そのために国会の意思が決められない場合、国として困ったことが生じることが考えられます。

 そうしたときに、衆議院を解散してある政党やグループが3分の2を獲得した場合に、衆議院に優越的地位を与えることにより法律を制定できるようにするために設けられたのが憲法59条だと私は思うのです。

 もう一度いいます。大切なのは、あくまでも現在の“国民の意思”です。形式ではないのです。形式が現在の“国民の意思”に合わなくなったとき、これをアジャストするために憲法59条という手続きがあるということです。道路特定財源の暫定税率をあと10年間延長することが、現在の“国民の意思”に合致しているかどうかが重要なのす。

 だから憲法59条があるからといって、衆議院はこれに従って必ず再可決しなければならないと規定されていないのです。“国民の意思”に明らかに反することを参議院がやった場合、衆議院は憲法59条2項と4項によって法律を制定できることを定めたのです。それは手続きに過ぎません。いちばん大切な憲法の実体的要件は、現在の“国民の意思”なのです。

 現在の“国民の意思”に反することをたまたま衆議院で3分の2を超える議席をもっているからといって、自公“合体”政権が道路特定財源の暫定税率を10年間延長する租税特別措置法改正案を再可決して成立させることは、憲法の精神に明らかに反しているのではないでしょうか。

 憲法に規定されていることだから、新テロ特措法を成立させたことも、租税特別措置法改正案を再可決することも正しいなどいうのは、憲法解釈論として甚だ浅薄だと私は考えます。乞う、ご高評。

  • 08年04月18日 12時09分PM 掲載
  • 分類: 5.憲法問題

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