詐欺でなく強盗である。
08年03月03日
No.725
この数日間、“取込み強盗”ということを考えている。“取込み詐欺”という言葉は聞いたことがあると思う。広辞苑によれば、取込み詐欺とは「初めから代金を支払う意思なしに物品を取りよせ、転売などしてしまう詐欺」とある。道路特定財源の暫定税率を10年間延長するために、自公“合体”政権は本当に“ああ言えば上祐”の類の詭弁を弄してきた。私はその都度嘘を暴いてきた。例えば永田町徒然草No.679「自動車通勤は贅沢!?」など。
参議院に租税特別措置法改正案が送付され、いよいよ最終的な局面となった。自公“合体”政権は相変わらず嘘八百を平気で並べ立てている。イージス艦「あたご」の衝突事故の対処や責任についても、文字通り「ああいえば、こういう。こういえば、ああいう」である。世間は三白眼の防衛大臣が防衛問題に詳しいように思っている。しかし、三白眼のこの人物は防衛大臣としていちばん大切なことを知らないようだ。武人のトップに立つ者としての気概である。すなわち潔(いざぎよ)さである。これ以上いわなくとも誰も可笑しいと感じている筈だ。最近ではあの顔をみるのも嫌だという声を耳にする。
今回の衝突事故も守屋前事務次官の不祥事も、要するに政治的には防衛大臣の責任なのである。政治的責任とはそういうものである。この根本が分っていないのだから、私にいわせれば防衛の素人なのである。国家公安委員長の仕事は防衛大臣と異なる。国家公安委員長は警察大臣ではない。だから大きな事件が起こっても国家公安委員長が現場で指揮を執ることはない。しかし、その存在感で警察組織を引き締め、鼓舞しなければならない。警察組織に大きな責任と反省を与えるためには、職を辞することもきわめて重要な身の処し方なのである。
閑話休題。税を取ることは、有無をいわせず国民の財産を国家が取ることなのである。道路特定財源の暫定税率を10年間延長することは、今後10年間に30兆円の国民の財産を有無もいわせずに取るということなのである。詐欺というのは、そこに嘘があったとしても国民が騙されて自分から財産を出す場合だ。税金は自ら財産を出すのではない。無理やり取られるのだ。税金を納めなければ役人が来て無理やりもっていく。徴税官吏というのは、昔は蛇蝎(だかつ)のように嫌われていた。
蛇蝎のような徴税官吏にその権限を与えるのが、法律である。だから法律によらなければ国民に税を課すことはできないのである(租税法定主義)。法律は国会でしか制定できない。国会とは衆議院と参議院である。参議院でノーといわれた場合、法律にはならない。その唯一の例外が憲法59条2項の衆議院における3分の2以上の賛成による再議決なのだ。普通に考えれば、参議院がノーという税金は取れないのだ。衆議院も国民の代表だし、参議院も国民の代表であるからだ。
衆参の議院の双方が賛成した場合しか、税金は取れないのである。だから本来“ねじれ”などないのである。参議院がノーといった場合、国民はその税に反対なのである。ただそれだけのことなのである。国家は税として取ることはできないのだ。現在たまたま自公“合体”政権が衆議院で3分の2を超える議席をもっているだけなのである。こんど衆議院選挙があれば誰もが自公“合体”政権で3分の2を超える議席など取れっこないと思っている。それなのに国民の意思に反して30兆円もの国民の財産を取ろうとしているのだ。“ねじれ”ているのは、自公“合体”政権の根性なのだ。
自公“合体”政権が衆議院で3分の2を超える議席をもっている間に30兆円の税金を取ることを決めようとしているのだ。自公“合体”政権がこの議席をもっているのは、あと1年ちょっとである。郵政選挙でたまたま手にした議席を奇貨として、まったく性格の異なる道路特定財源の30兆円を無理やり取ろうとしているのだ。これは取込み詐欺ではないだろう。“取込み強盗”というのがいちばん妥当なのではないかと私は思っている。強いて好意的にいっても“駆込み強盗”というのが精一杯である。取込み強盗であろうが、駆込み強盗であろうが、要するに“強盗”なのである。強盗に政権を簒奪(さんだつ。帝位を奪いとること)されていると、国民は苦労する。
それでは、また。
