どうしようもない“与党ボケ”
07年12月07日
No.636
自民党も公明党も、与党ボケをしているようである。いっぽう、野党は相変わらず“野党根性”が直らないようである。政治などというのは、決して難しいものではない。要は、国民の利益を守ることであり、国民の願っていることを実現することである。毀誉褒貶を自らが負うことを覚悟して現実をひとつでも変えていくことが、“政権担当能力”なのである。いまいろいろな問題でそのことが具体的に問われている。
道路特定財源、暫定税率10年維持 自公合意
来年度予算編成に向けた道路特定財源の見直しをめぐり、自民、公明両党は6日、本来の約2倍に引き上げられている暫定税率を08年度から10年間は維持したうえで、道路歳出を上回って一般財源化される税収の使途に、環境目的を盛り込むことで合意した。この10年間の道路整備中期計画については、国土交通省が素案で示した65兆円の道路整備費を6兆円減額することで一致。地方の道路整備のため、自治体に対する無利子貸付金制度を創設するほか、自治体への補助率をかさ上げする。7日に政府・与党で最終決定する。
一般財源化の規模は、道路整備費を圧縮したことで、今年度の1800億円を上回る額が確保できる見通し。ただ、昨年末に閣議決定した「真に必要な道路整備は計画的に進める」との考え方は維持され、道路整備の無駄遣いを改める仕組みは不十分なままだ。道路整備費と道路関連事業費を除いた一般財源部分でも、福田首相が重視する環境対策への充当を打ち出したことで、使途が縛られる可能性もある。
道路関連事業費としては、原油価格の高騰を背景に、10年間で2.5兆円を高速道路料金の引き下げなどに回すほか、地方対策として、財政状況の苦しい自治体向けに無利子貸付金制度を新設するほか、道路整備臨時交付金から自治体に支出する補助の割合を現行の55%から最大70%にかさ上げする。
道路特定財源の暫定税率をめぐっては、公明党が自動車重量税(自重税)の引き下げを強く求めたが、自民党が拒否。道路整備中期計画(08年度から10年間)の期間中は暫定税率を維持することになった。公明党の求めに応じて、今後の税制の抜本的な改正に合わせて「暫定税率を含めて自動車関連諸税を総合的に見直す」ことを盛り込んだが、暫定税率の廃止につながるかどうかはわからない。<2007年12月07日02時30分>
ちょっと長くなったが、asahi.comからの引用である。この記事には実に論点が多くある。それらをすべて取り上げることはとてもできない。主な論点だけを取り上げる。まずガソリン税の暫定税率をはじめとする道路特定財源の原資である自動車重量税などの暫定税率を今後さらに10年間延長するすることである。これらを決めている租税特別措置法の延長に野党の賛成を得て参議院で可決されるか、衆議院で与党が3分の2を使って再可決しない限り、ガソリン税は自動的に本則税率に戻るのである(永田町徒然草No.634参照)。道路特定財源といわれている石油ガス税、自動車重量税(車検時に納める税金で毎年納税する自動車税とは異なる)、軽油引取税、自動車取得税はそれぞれ根拠法が異なるためガソリン税と同じではないので注意されたい。
次に問題とすべきは、与党が暫定税率を10年間“維持”するとしたことである。まぁ、租税特別措置法で10年間延長することはできるが、普通は1年とか3年とか期間を限定するのが租税特別措置法の普通の規定の仕方である。現在の暫定税率を10年間も続けるというのであれば、ガソリン税の根拠法である揮発油税法と地方道路税法の税率を改めるべきなのである。それにもうひとつ看過できないことがある。与党は確かに再可決で法律を定めることが可能だが、それはあと1年数ヶ月でしかない。
次回の衆議院選挙で自民党と公明党が3分の2以上の議席を獲得することはまず不可能であろう。現在たまたま衆議院で3分の2を超える議席をもっていることを奇貨として、2008年4月から10年間の税金を決めてしまおうという態度である。2008年4月から数えれば、衆議院の任期は1年5ヶ月しかない。駆け込みのぼったくりの発想である。実に卑しい。また実に浅ましい。国民も野党も、このことに強い怒りをぶっつけるべきである。直近の国政選挙で大敗を喫し、参議院で過半数をもっていない自公“合体”政権は、野党の賛成の得られない法律を成立させることはできないのだという認識がないのである。私が与党ボケといっているのは、そのことなのである。
さらに大きな問題がある。「道路関連事業費としては、原油価格の高騰を背景に、10年間で2.5兆円を高速道路料金の引き下げなどに回すほか、地方対策として、財政状況の苦しい自治体向けに無利子貸付金制度を新設するほか、道路整備臨時交付金から自治体に支出する補助の割合を現行の55%から最大70%にかさ上げする」としていることである。高速道路料金の引き下げに回すというのは、民主党が主張する高速道路料金無料化を念頭においてのことであろう。この政策の是非は別に論じた方がいいだろう。テレビを見ていたら、「いくら高速料金を安くしてくれても、ガソリンがこんなに高いのじゃ乗れないよ」といっている人がいた。まさにそのとおりであろう。どうして高速道路料金の無料化とか引き下げといった“ねじくれた”発想しか出てこないのだろうか。
地方に配慮していることを印象付けたいようである。が、だったら、ガソリン税の「揮発油税と地方道路税の比率」を変えるのが本筋であろう。国税として徴収される揮発油税を財源とする道路予算で、国は多額の補助金を地方公共団体に交付している。そこにいろいろ問題があることは、つとに指摘されているところである。使途を細かく決めずに地方が自主的に使える道路財源を増やすためには、ガソリン税の“地方道路税”を多くし“揮発油税”を少なくすることが正しい解決の仕方なのである。
「道路整備費と道路関連事業費を除いた一般財源部分でも、福田首相が重視する環境対策への充当を打ち出したことで、使途が縛られる可能性もある」というのも、問題である。環境ブームだから「それならば賛成だ」という意見も予測できる。私も環境問題は大切だと思うが、だからといって、税金を誤魔化すのは良くない。環境税が必要ならば正面から議論して、理屈に合った正しい税金の取り方をしなければ、環境対策として実際に使われる予算も必ずいい加減なものになる。私が道路特定財源の一般化に反対する理由のひとつがここにある。税に対する同意と納得が、民主主義国家ではいちばん大切なのだが、道路特定財源の一般財源化には、そのような思想がないのである。自公“合体”政権はいざ知らず、野党は本当にそれでいいのですか、と私がいう所以である。
まぁ、今日はこのくらいにしておこう。それでは、また。