安倍首相は、もう狂っている。
15年09月05日
No.1774
長い間、私は日本の政治を見てきた。その期間は、約50年となる。その中で、いちばん貴重な経験は、時の政権与党・政府自民党の一員として過ごした約25年間だった。時の政権与党というものは、国民から批判を受けるものである。それは、已むを得ない。しかし、その批判に晒されながら、“何が正しいのか”を思索する中で、私は、政治というものを学んできた。
私が政権与党の一員として国政に参画したのは、昭和50年から平成13年までの約25年間である。その間にも、いろいろとおかしなことがあった。私は、保守リベラルの政治信条に基づき、ひとりの政治家として発言し行動した。時には、党内主流派から厳しい処遇を受けることはあったが、現実政治の中では、“それは止むを得ないこと”と割り切り、保守リベラルの信念に従って行動した。それに対して、“党内外から”賛同や支援を受け、私は、政治的足場を失うことはなかった。
私がこの永田町徒然草で書いたり主張していることは、このような経験に基づいている。私は、リベラリスト=自由主義者である。自由主義者にとって一番大切なことは“批判精神”である、と私は考えている。他者に対する批判はもちろん大切であるが、己に対する批判も忘れてはならない。他者と激しい論戦をしていても、他者の主張の中に己に欠けていることがあれば、それに対して謙虚に思いを致さなければならないと、肝に銘じてきた。
このような経験を顧みると、私が激しく闘った人々にも、それなりの矜持と信条があったと思っている。だから、私は、その人たちを全否定する気持ちはない。私が闘った相手とその仲間は、少なくとも、狂っていなかった。しかし、私がいま闘っている安倍首相は、“少し、いや大いに”様子が違っている。昨日、あるテレビ番組を見て、私はそう確信した。
そのテレビ番組とは、毎週月曜日から金曜日午後1時55分から日本テレビ系列で放映されている、読売テレビ制作の『ミヤネ屋』と呼ばれる情報番組である。最初のうちは、“ミヤネ屋”というのが何を意味するのか分からなかったが、この番組のメインキャスターである宮根誠司をもじった“ロゴようなもの?”である。私は数年前から、仕事をしながらヒマな時に見ているが、情報ごった混ぜ番組だ。時々政治モノもやるが、読売テレビよろしく、偏向したものが多い。
ちなみに、2015年9月4日のテレビ番組案内には
1・55「ミヤネ屋 政治SPミヤネ特別国会開設!代表質問・宮根誠司君
▽正直「?」なあなたに送る、今さら聞けない安保法制▽必見です」
とある。最初は、局側が作った安保関連法案についてかなり間違った解説が流され、それを受けて、いよいよ安倍首相が登場した。安倍首相と宮根誠司やコメンテータが“議論”したが、最初から最後まで、聴くに聴けないヨイショ発言の連続だった。
20年近く前になるが、“奥様番組”で政治モノが流されたことがあった。最近、奥様番組という言葉は、あまり聞かなくなった。現在も、昼間いろいろな情報番組があるが、私に言わせれば、昔の奥様番組と大同小異である。安保関連法案に対する国民の理解が進まないからといって、国会審議がいよいよ煮詰まっり、争点が明白になっている時に、笑止千万のこのような番組に出ること自体が、問題である。しかも、わざわざ大阪まで行って。
いま、世界同時株安状態の危機にある。この日も、日経平均で一時500円強も下げていた。わが国は、年金資金で日本株を大量に保有するようになったのだ。いままでのように、“市場のことは市場訊け”とは言えなくなったのだ。アベノミクスとかいわれる政策のためである。エンブレム問題も、泥沼化の様相を呈している。東京オリンピックそのものを白紙にしてしまえ、という声も出始めている。あれだけ熱心にオリンピックを招致した安倍首相なのだから、その責任は大である。
安保関連法案に対する政府与党の答弁は、迷走している。国民の怒り・反対も、最高潮に達している。昔なら、こんな状態ではとても、国会を通せはしなかった。しかし、国会で自民党・公明党が圧倒的な議席を持っているため、確かに通すことはできるかもしれない。安倍首相は昨晩、大阪から帰ってきて、谷垣幹事長と9月中頃の採決で合意したという。
こうした安倍首相の言動、安倍内閣の動静を見ていると、「安倍首相はもう狂っている」と、私には見える。こんな安倍首相をたしなめられない谷垣幹事長をはじめとする自民党の国会議員、公明党の国会議員も、狂ってしまっているのだ。アベノミクスに狂奔している経済界も、おかしい。要するに、わが国のすべてが狂い始めているのだ。政治が狂うと、そうなるのだ。だから、政治は大事なのだ。
8月30日の国民の大決起は、わが国の唯一の希望を感じさせるものであった。自公“合体”政権が安保関連法案を参議院で採決しようとする時、国民はまた立ち上がるであろう。野党各党も、団結して行動するという。野田聖子女史も、自民党総裁選に立ち上がるようだ。「義を見てせざるは勇無きなり」と女性に言われたのでは、自民党の男も動かざるを得まい。
政治は時どき、想定外の動きをする。最近、“想定内のこと”と言って、目の前で現実に起こってる事実と真面目に対峙しない評論家が多くなってきた。政治も経済も、人間が行うこの世の出来事である。浅はかな理屈や勝手な思い込みで想定できるものではない。人間の行いというのは、なかなか分からないことが多い。それがまた、人間の魅力なのだ。この10日前後に日本国民がどのように行動するのか、私は、希望を持ち、期待している。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。