水が火を噴いている。
07年03月13日
No.363
昨日テレビ朝日の『報道ステーション』を観ていたら、最後の方で緊急世論調査の結果が報道された。テレビ朝日が独自にやった世論調査である。他のいろいろな項目についてもやったと思われるが、松岡利勝農林水産大臣の光熱水費用をめぐる政治資金報告書に関する問題では、88%近くの人がおかしいといっていると報道していた。私は驚いたのは、松岡大臣の「適切に処理している」という発言を88%近くの人がおかしいということより、別のことであった。
松岡氏の政治団体の政治資金報告書に光熱水費を数百万円と計上していたという事実が報道されるようになってまだそんなに長い日時は経っていない。ましてや還元水を作る器械等などを使っているためにそのくらいかかったのだという珍答弁が報道されるようになってから、まだ数日しか経っていないと思う。確かにマスコミは熱心に報道していたが、政治資金報告書という極めて専門的・技術的な問題である。額も数百万円である。疑獄事件などでは数億円というのが最近では珍しくないが、それに比べれば小さい額だ。それなのに質問を受けた人が松岡氏のこの問題を知っていたという事実は、私には驚異であった。
領収書の添付が求められない政治資金報告書の経常経費に関し政治事務所というか会計責任者の認識は、かなり杜撰(すさん)でもいいというのが一般的である。もっと率直にいうと作文でもいいという感じなのである。なぜならば、政治資金報告書に書いてあることが事実かどうかを各都道府県の選挙管理委員会や総務省が税務署のように調査することはないからである。法律上もそのような権限は認められていないし、実際問題としてそのような調査が行われたことは寡聞にして知らない。だから仮に作文であったとしても、現実には問題になることはそれ自体としてはないのだ(他の事件の捜査から虚偽記載や会計帳簿不存在が罰せられたことはあったのかもしれないが…)。
問題になっている松岡氏の政治団体の光熱水費に関する報告は、作文としてもおかしいから問題になってしまったのだ。作文にもなっていないのである。これからいくら領収書を掻き集めても支払っていない議員会館の光熱水費に数百万円も使ったという作文を創作することは無理であろう。いくら「適切に処理されている」と強弁しても、光熱水費について作文することもこれを証明する領収書を揃えることもまず無理であろう。松岡氏は、この問題に対処する方針を最初に間違ってしまったのだ。それは政治資金規正法を全体として正しく理解していなかったことに原因がある。法律に関する無知がこういう結果を招く。
松岡氏がどうしていたら良かったのかというと、光熱水費に関する記載は間違っていましたといって問題の政治資金報告書を修正することにすれば良かったのだ。提出したり公表された政治資金報告書でも、その修正は認められている。松岡氏にどういう軍師がいるのか知らないが、これ以外は無理であり、今後そのように処理される虞があるからあえていっておくことにした。このような処理をした場合、修正を都道府県選挙管理委員会や総務省は受け付けるであろうが、今度はこれまで執拗に「適切に処理されている」と答弁したことが仇になって、松岡氏は政治的にもたないだろう。
一方、小沢一郎民主党代表の政治団体の場合は、松岡氏の場合の逆である。事実はあり、それに関する領収書もあるのだが、事実そのものについての国民の評判はすこぶる芳しくないのだ。政治資金規正法に違反している訳ではないが、事実に対する評価が小沢氏にとって厳しいのだから、それを避けたかったら事実そのものを修正すればいいのだ。秘書の家賃負担を軽減するなどの目的で不動産を買ったそうだが、秘書には住居手当をちゃんと払うことにして、購入した不動産を売却してその代金を政治団体の収入とすればいいだけのことなのである。政治資金規正法は不適切な政治資金の使い方を罰しようと法律ではないのだ。政治資金の使い方を明らかにすることにより、その政治家や政治団体の評価を国民から適切にしてもらうことにあるのだ。覆水は盆に還らない場合もあるが、小沢氏の場合は元の状態に戻せるのだ。事実を修正するしか国民の理解を得ることはなかなか難しいのではないか。
弁護士だからといって、私はこのような偉そうなことをいっているのではない。国会議員というのは法律を作るのが本来的な仕事なのである。だから最低限、法律を読む力くらいはもたなければならない。なぜならば、官僚は自分たちに都合の良いような法律を作りたがるものである。そこを見抜いて官僚には厳しく、国民の利益になる法律を作るのが国民の代表としての任務だからである。従って、法律がどういうことをいっているのかということを最低限理解する読解力はもっていなければ仕事にはならないのである。上で述べたことは、その類の話なのだ。決して難しいことを要求しているのでない。
『報道ステーション』は、衛藤晟一・前衆院議員の復党や内閣支持率についての世論調査の結果にも触れていたが、長くなるので省略する。世論調査については、別の機会に改めて述べたいと思う。それでは、また明日。