総括・小泉純一郎(その1)
07年03月08日
No.358
最近またぞろ小泉純一郎前首相が動き出した。20日くらい前であったか、中川秀直自民党幹事長と会い「鈍感力」を伝授したという。そのため「鈍感力」を説いた本がベストセラーになり始めたという。昨3月7日には、小泉氏が安倍晋三首相と中川幹事長とあって、参議院選挙で仮に負けても安倍首相は退陣する必要はないとのたまわったと中川幹事長がテレビでいっていた。支持率が低迷する安倍首相や自民党は、小泉氏の人気を利用しようとしているようである。愚かなことだと思うが、けっこう騙される人も多い。
かつては熱心な共産党員だったある友人が「小泉純一郎は政治的な天才だった」などといっていた。私はびっくりした。小泉純一郎が稀代の政治的詐欺師であることは事実であるが、たとえ比喩であっても「天才」などという表現を使うことは使うのはおかしいだろう。大きな結果を出したことだけを捉えてそう表現するのだとしたら、ヒットラーも池田大作も「天才」ということになる。ナチス党員や創価学会員でなければ、仮にもそんなことはいわないだろう。要するに小泉純一郎という政治家について十分な総括がなされていないからである。
参議院選挙を数ヵ月後に控え、また自民党が小泉人気を利用しようとしているとき、私なりに小泉純一郎という政治家を総括することが必要と思った。私が自民党を離党して間もなく小泉氏は首相となった。小泉氏とはいろいろな因縁があるが、この6年間は私が戦わなければならないターゲットだった。従って、これまでも小泉純一郎という政治家についていろいろと批判してきた。それらを改めて紹介したり、新たに書き起こしたりして小泉純一郎という政治家に私なりに分析・総括してみることにする。その体裁は、「総括・小泉純一郎(そのx)」として不定期に掲載する。さっそく「総括・小泉純一郎(その1)」の本論を掲載する。今回は小泉純一郎と選挙である。
小泉純一郎は本当に選挙に強かったのか?
小泉自民党は2001年の参議院選挙と2005年の郵政解散選挙以外は、実は選挙に勝っていないのである。2004年の参議院選挙では、民主党50議席に対して自民党は49議席だった。2003年の衆議院総選挙では比例区では民主党に第一党の地位を許してしまったのである。どちらも政治的には明らかな敗北である。
しかし、小泉氏というと選挙に強かったという印象が残っているのはどうしてであろうか。それは2001年の小泉フィーバーで勝った参議院選挙と小泉劇場を演出して雪崩現象を起こして勝った2005年の総選挙の印象があまりにも強烈だったからであろう。
それでは、郵政解散の最大の問題点は何処にあるのだろうか。私は郵政政策に長く携わり望んで郵政政務次官などを務めた関係で、小泉首相がいうところの郵政民営化はまやかしであり間違っていると断言できる。郵政問題の本質は郵便を含めて通信の秘密をどう守るかという根源的な基本的人権の問題なのである。今回はそのことは触れないことにする。
小泉氏は郵政民営化の是非を国民に問うことで、民営化法案に賛成した衆議院を解散した。ある種の国民投票をやろうとしたのである。しかし、わが国の統治システムには国民投票という制度はない。そのような制度がないのに国民投票的手段を用いたのだ。
一見民主的に見えるが、郵政民営化賛成ということで投票し、その候補が当選すれば他の問題についても条件を付けれず委任を受けたことになるのである。そして現に教育基本法やら防衛省設置法などの重要法案を次から次へと現に成立させたではないか。
騙した小泉首相が悪いのか、騙された国民がお人好しというべきなのか、ほとんどすべての人が参加した小泉劇場なので、あえて断定は避けよう。しかし、一見民主的なように見える国民投票というイメージで議席を詐取した手法は、強く非難されなければならない。こういうことが許されれば、エビで鯛を釣ることをしてもよいことになる。 (つづく)
それでは、また明日。