"一害を除く"に徹せよ!
09年10月15日
No.1317
昨夜、雨が降った。窓を開けていると外気はもう冷たい。もう、そういう季節になってしまった。今年もあと2ヶ月半。8・31の勝利から1か月半が経つ。毎日毎日、鳩山内閣はニュース報道を賑(にぎ)わしてくれているが、あまりゾッとすることはない。端的にいうと“あまりゾッとしないなぁ”と思われることが多々ある。個々のことを言う前に、まず総論的なことを述べてみよう。
政権を担うということは、ほんらい地味なのである。考えてもらいたい。毎日毎日、政府が派手なことをやっていたのでは、国民の生活は安定しないし、国民は安心できない。今回の政権交代はひとつの革命であるから、派手なことが一つや二つくらいあっても少しも驚かないが、派手なことは劇的に変わっても国民が少しも困らないことから始めるべきである。「興一利不若除一害」を肝に銘じて行うことが肝心である。国民の多くが“一害”と思っていたことをまず取り除くことに専念することである。
道路特定財源の暫定税率は、7割近くの国民が“一害”と思っていたことだ。まず道路特定財源の暫定税率の廃止から手を付けるべきであった。そうすると道路予算に3兆円近くの穴が空くかもしれない。国土交通省の道路官僚は、その事態を見込んで早々と執行していたであろう。しかし、そのことは昨年の国会の攻防からして、民主党が政権を取ったら已むを得ないことである。予算の配分を受けた方も、そういう覚悟をもっていたはずだ。政治とはそういうものである。
インド洋における給油活動も、民主党が政権を取ったら当然に止めるべきことであった。アメリカがどういう言おうが、それができないようでは日米の信頼関係など築けるはずがない。民主主義という価値観を共有する日米関係なら、給油活動の停止などで問題が起きるはずがない。またこれを実行できないようならば、民主党が政権についた意味がない。給油活動を停止する代わりに、アフガニスタンの民生支援を強化することは、基本的に因果関係がないことである。
後期高齢者医療制度も即刻廃止すべきであろう。これも多くの国民が“一害”と思っていたことである。こちらの方は、道路特定財源の暫定税率の廃止よりも諸手続きを踏まなければならない問題であるが、いつまでに廃止するくらいのことは明らかにしなければならないであろう。年金問題もけっこう時間と費用がかかりそうである。しかし、ミスター年金と言われてきた大臣なのであるから、快刀乱麻の決断が期待されても仕方ないであろう。
以上はこの数年の政治の攻防で、国民の多くが“一害”と断じたことであった。このような“一害”は可及的速やかに取り除かなければならない。いくら派手にやっても国民は怒らないだろうし、驚きもしない。
しかし、“興一利(一利を興す)”は、慎重にやった方がよい。民主党の閣僚はマニフェストに書いてあることを金科玉条としているが、一利を興す決定的理由にはならない。そもそも新しいことを行うことについては、いろいろな意見や選択肢があるのである。その合意形成は、非常に難しいのである。この政治の要諦が、どうも分かっていないようである。
それでは、また。