モンテスキューの『法の精神』
07年01月11日
No.302
「政治的自由は温和政体にしか見いだせない。しかしそれは、穏和国家にはつねにあるというのではない。それは、権力の濫用されぬときにしか存在しない。だが、権力をもつ者はすべて、それを濫用する傾向があることは、永遠の体験である。
人が権力を濫用しえないためには、事物の配列によって、権力が権力を阻止するのでなければならぬ。‥‥‥ 同一人、または同一人の執政官団体の掌中に立法権と執行権が結合されているときには、自由はない。なぜなら、同じ君主あるいは同じ元老院が暴政的な法律を定め、それを暴政的に執行するおそれがありうるからである。
裁判権が、立法権と執行権から分離されていないときにもまた、自由はない。もしそれが、立法権に結合されていれば、市民の生命と自由を支配する権力は恣意的であろう。なぜならば、裁判官が立法者なのだから。もしそれが執行権に結合されていれば、裁判官は圧制者の力をもちうることになろう」（井上幸治訳）
モンテスキュー（1689～1755）が権力分立論を展開した『法の精神』（1748年発刊）にある文章である。実に味わい深い智慧に満ちたものではないか！ この権力分立論に基づいてほとんどの国が三つの権力を分離している。 立法、行政、司法の権力である。わが国でも三権が分立されている。モンテスキューや三権分立ことは小学校のころに教えられたことである。しかし、わが国の大人はもう一度このことを考えてみる必要がある。
「権力をもつ者はすべて、それを濫用する傾向があることは、永遠の体験である」 わが国の国民は主権者となってからも依然として寄らば大樹という考えが強い。国民も政治家も強烈な与党志向なのである。評判がすこぶる悪かったあの郵政造反議員の自民党復党も、原因はここにある。権力を持たなければ所詮何もできないと彼らはいう。私はいいたい。他人が作った権力に入ることが大事なのではなく、真の政治家は国民が望む権力を作ることである、と。
議院内閣制――議会の多数派が内閣を作るという制度は、そのことが直ちに権力分立に反するものではないと考えられている。しかし、議会で多数を占める政党が国民の利害や意識を真に代表している場合のみ、議院内閣制は民主主義に違背するものではないといえるのである。与党が国民の意識や利害を正しく反映しているかどうかというところまで憲法は規定していない。それは政治の問題である。自民党という政党に長い間多数を与え、この政党に長い間行政権も与えた場合でも、権力の濫用が起こらないとしたらそれは奇跡といっていいだろう。しかもいまは公明党というえげつない政党がくっ付いているのだ。、そんな奇跡を信じる有権者は、おめでたい国民といってもいいだろう。
「裁判権が、立法権と執行権から分離されていないときにもまた、自由はない」 このことも深く考えなければならない。30年近くのブランクをおいて最近弁護士の仕事を少しするようになった。そこで感ずることは、この30年間で司法は完全に退化したということである。裁判所の建物は立派になったが、法廷で行われていることは30年前よりはるかに人権を無視するひどいものになってきている。これからは政治だけではなく、司法に関することも時々書こうと思っている。国民の権利や人権が実際に裁かれる法廷においては、モンテスキューのいうとおり「裁判官が立法者なのだ」。
昨夜は12時過ぎに眠りにつき、今朝8時に目覚めた。このような十分な睡眠をとるべき時にとったのは実に久しぶりのことである。実に爽やかである。衛藤征四郎議員、松岡利勝農水大臣、今度は伊吹文明文部大臣の金銭疑惑が新聞を賑わしている。この三人とも私は因縁浅からぬものをもっている。これらを書き出すと長くなるのでよすことにする。読者諸氏も日々起きる事件や問題の表面ではなく、その原因である自公政権の根本的な問題を考えてほしい。
それでは、また。
