“ねじれ”論(その1)
08年06月29日
No.854
わが国の政治のどこが問題なのかと問われると、多くの政治評論家は“ねじれ”国会だという。しかし、ねじれ国会は、本当に問題なのだろうか。自公“合体”政権の側に立つ人にとっては、ねじれ国会は困ったことなのであろう。だがその立場に立たない人にとって、ねじれ国会など大した問題ではない。多くの国民もそう思っているのではないか。その証拠に多くの世論調査で、「次の総選挙で野党が伸びて欲しい」という回答が多い。比例区での投票は民主党を中心にする野党と答える人が自民党や公明党と答える人を上回っている。
国民の政治的意思は、国会を通じて表される。国会の意思とは、衆議院と参議院の意思のことである。通常“ねじれ”国会とは、衆議院と参議院の多数派が異なっていることをいう言葉である。多数派が異なれば衆議院と参議院の意思が異なるのは当然である。そんなことはこれまでもあったし、これからも度々おこるであろう。選挙制度が異なるのだし、選挙に時期が異なるのだから起こり得ることである。
昨年の参議院選挙以後、どのような事例が具体的に問題になったのだろうか。“ねじれ”は、新テロ特措法案を巡って初めて起こった。参議院は、自公“合体”政権が衆議院で可決した同法案を否決した。当時の世論調査では、新テロ特措法案に反対との意見が国民の3分の2近くあった。ところが自公“合体”政権は憲法59条2項により再可決した。新テロ特措法は成立し、いったん撤退していた自衛隊は再びインド洋に派遣された。
次に問題になったのは、日銀総裁人事に対する同意案件であった。自公“合体”政権は財務省出身の武藤元財務次官、これが不同意になると田波氏に拘ったが、野党はいずれも不同意とした。人事案件には憲法59条2項の再可決の規定が適用されない。自公“合体”政権が日銀出身の白川総裁で止むを得ないとしたので、ようやく決着した。
記憶に新しいところでは、いうまでもなくガソリン税の暫定税率を含む租税特別措置法改正案であった。道路特定財源の暫定税率の多くは、2008年3月31日で期限切れになり本則税率に戻った。3分の2近くの国民は、ガソリン税などの暫定税率の復活に反対した。しかし、自公“合体”政権は衆議院で再可決し、即日公布施行し暫定税率を復活した。 <つづく>