世論調査にみる質的な変化
08年04月22日
No.780
そろそろ解散総選挙を視野に入れなければならない政治情勢になってきた。世論調査の分析は暫くしてこなかった。これからはまた例によって『朝日新聞』の世論調査に基づいて世論の分析をしようと思う。どこの世論調査が正しいか、あるいは当たるかということを私はそれほど重視しない。同じ調査方法によるデータを比較し、これを分析することが重要なのである。
昨日の『朝日新聞』に4月19・20に実施された世論調査の結果が掲載された。同じ記事がasahi.comにも掲載されていた。引用する手間が省けるので、これを貼り付けることとする。まず私は調査方法をあまり問題にしない。電話か面接かである。面接方式の方を高く評価する人がかなりいるが、私はこの点を重要視しない。面接による世論調査は経費がかかりすぎるのだ。多額の費用をかけたからといって信頼に足る世論調査になる訳ではない。それよりもその費用で何回か世論調査を行い、その変化をみることの方がはるかに大切なのである。
世論調査で大切なのは、傾向なのである。仮にある時点の世論を知りたいと思いサンプル数を増やしても、必ずしも世論を正しく把握できるものではない。二つ以上の時点のデータを比較検討した方が、ある時点の世論を正確に把握できると私は考えている。例えば“ガソリン税の暫定税率を衆議院での再議決で復活すること”について、3月29・30日の調査(以下、前回調査という)では賛成24%・反対61%だったが、今回の世論調査では賛成24%・反対63%だった。61%と63%の違いは誤差の範囲ともとれる。
今回調査の時点ではガソリン価格が現実に大きく下がっている訳だが、それはあまり大きく影響していない。国民は暫定税率と再議決の問題をきわめて理性的に考えていることが窺える。自公“合体”政権は「75日もすれば国民は暫定税率のことなど忘れる」と考えているようだが、それは甘いということだ。福田首相の“道路特定財源の一般財源化”という大キャンペーンが大々的に行われてた訳だが、これもあまり功を奏していないも窺える。私がいつも言っているように、国民は暫定税率について反対しているのである。国民は問題の所在をハッキリと捉えているのだ。野党はブレてはならない。
福田内閣の支持率のグラフをみると、支持がじりじりと低下している。前回調査では支持31%であったが、今回調査では25%である。6ポイントの下落は誤差の範囲を明らかに超えている。明らかに支持が落ちているのだ。その原因のひとつは、ガソリン価格の下落を実感した者が、自公“合体”政権が再可決によって暫定税率を復活させることに対する反対からであろう。もうひとつは、いうまでもなく後期高齢者医療制度の問題点が露呈したからであろう。
不支持率の変化が興味深い。12月19・20日の調査から不支持が支持を上回った。しかし、48%~53%のブレは、誤差の範囲内の数値といえなくもない。そうでないとしてもごく僅かの変化である。今回調査で判明した不支持率53→60%の変化は支持率の6ポイント減少とあわせて分析すると、明らかに質的な変化が起きていることが窺える。「内閣支持率を年代別にみると、70歳以上で前回は支持46%、不支持34%だったのが、今回は支持36%、不支持50%と逆転している」と記事は報じている。自公“合体”政権が再可決によってガソリン税の暫定税率を復活させれば、同じような現象が起こるであろう。
自民党と公明党にとっていちばん深刻なのは、政党支持率の減少であろう。自民党が31→26%、公明党が3→2%の減少である。政党支持率は、そんなに変わらないものなのである。そして内閣支持率に比べ、かなり正確に実際の投票行動となって現れる。だから1ポイントの変化も見逃すことができないのだ。公明党の1ポイントの減少は、公明党にとって深刻な筈である。共産党は1→2%と1ポイントのアップであった。両党ともサンプル数が少ないのである。そのデータが1ポイントも増減していることは、他の政党とは違った意味をもっているのだ。
解散総選挙が巷間いわれるようになってきた。正直いって私には解散総選挙へのシナリオがハッキリとみえない。誰も解散総選挙へのシナリオなど書いていないのではないか。誰もそのシナリオを書く力など持っていないのではないか。そもそも私は国会議員だった頃から解散の時期を予測することにあまり意味を感じなかった。総選挙で何が争点になり、国民がどのように行動するかを考えることが重要なのだ。候補者・政党としてどのような主張や行動を行うかが大切なのだ。国会における日々の発言や行動の可否によって結果が決まる。国政選挙は、なによりも政治戦なのである。
それでは、また。