凶とでるか吉とでるか!?
07年06月23日
No.466
昨日多くの方々からメールをいただいた。もちろん、誕生日おめでとうというメールである。この場を借りて感謝申し上げます。国会議員の時も、誕生日のお祝いのメールをこんなに頂戴したことはなかった。もっとも当時、「今日は私の誕生日だ」などと公言することもなかった(笑)。これからは誕生日には親しい友人を招いて誕生会でもやろうと考えているのだが……、と家内と家内の母とこの前食事をした時に話をしたところおふくろさんに笑われた。「勝彦さん、誕生会などというのは人から開いてもらうのであって、自分から開くものではないのですよ」と諭された(笑)。……
きっとアメリカなどは、こういう時に自分の家でホームパーティーを開くのであろう。親しい人だけを招くホームパーティーだから、公的に付き合っている人を呼ばなくてもきっと失礼にもならないのだろう。私たちのような政治家稼業をしている場合、この“公私の区別”というのがなかなか難しいのである。政治上の親しい友というのは、特別の関係なのだ。ときには命を賭けた行動を共にする関係なのである。また親しい友人は選挙でも大きな協力をしてくれる。そのような友人が多くいないと選挙を乗り切ることができない。政治家稼業というのは、いうならばきわめて個人商店的なものなのである。
しかし、来年はこの困難なことに挑戦をしてみたいと思っている。親しい友人といってもそんなに用事がある訳ではない。いや、親しい友人なればこそ、遠慮をしなければならないことも多い。「いま、私たちは語りかけ合わなければならない。できれば会って、話し合わなければならない。真の友を得るという努力をしなければならない」(「友へ>友よ」の解題)と私は思っている。そうすると誕生会などというのは、ひとつの良い機会なのである。古くからの同世代の友人となるとそういう機会が何回あるか分からないのだ。自分の葬式が久々に親しい友人たちが集う会であったとしたら寂しすぎる。そこに私がいないのでは、やり切れないような気がする。来年の誕生日が楽しみである。
閑話休題。昨日、今国会の会期が12日間延長された。これで参議院選挙の日程が確定した。7月12日公示、7月29日が投開票日だ。あと1ヶ月と1週間で安倍首相の命運が決まる。今回の決定が果たして、凶とでるか吉とでるか。今回の会期延長は、安倍首相がかなり強引にイニシアチブをとって決めたようである。まず安倍首相がそのような決断をなぜしたのかを冷静に考えなければならない。安倍首相は、このまま参議院選挙に入っていけば間違いなく敗北すると判断したのだろう。その認識は正しい。少なくとも間違っていない。
ここに『週刊文春』(文芸春秋社)6月28日号がある。政治広報センター社長の宮川隆義氏が驚くべき参議院選挙の予測をしている。宮川氏の選挙予測は、人的要素などの選挙事情をあまり入れないで、世論調査の数値を基にして結果を予測するという手法だ。これもひとつの考え方である。宮川氏は、予測値として自民党38議席、公明党10議席、民主党56議席……としている。焦点の29ある1人区で、自民党が優勢または有力とされるのは9選挙区しかないという。さらに「いまの情勢が続けば、野党がさらに続伸する余地はある」と付け加えている。
宮川氏はもともと自民党に近い政治広報関係の仕事をしている人である。この分析結果は、安倍首相にも当然のこととして届けられているだろう。安倍首相としては驚愕する筈である。これでは「山が動いた」といわれた1989年(平成元年)の参議院選挙に似たような結果となる。安倍首相は直ちに退陣しなければならない。だから安倍首相は党内にどんな意見があったとしても会期延長に踏み切ったのだろう。それは当然のことなのである。しかし、そのことにより事態がどのように推移するかは、今後の与野党の攻防にかかっている。例の“官僚人材バンク”法案を成立させ、投票日を1週間延ばすことにより、事態を少しでも改善したいというのが安倍首相の思惑であることは明白である。何もしないよりはマシだろう。
“官僚人材バンク”法案について、かつて面白い攻防があった。永田町徒然草No.321で紹介したように、今年1月29日の衆議院本会議の質疑で、松本民主党政調会長が「安倍首相は圧力や便宜を伴う押し付け的な天下りは良くない、これは改めなければならないと答弁した。しかし、政府や安倍首相がこれまでの天下りを圧力や便宜を伴う押付け的な天下りと言明したことはなかった。ということは現状の天下りを根本的に改めることにはならないのではないか」という趣旨の再質問をした。
松本氏の再質問は、安倍首相の天下りに関する現状認識を問うものであり、意味のあることだったと思う。多くの国民も天下りに不快感をもっている。安倍首相も天下りを見直すといっている。だから、これまでの天下りについてどのような現状認識をもっているのかは大事な点である。現状認識が正しくなければ、その見直しもおかしなものとなる。その点を再質問したのだ。
これに対する安倍首相の答弁は、「先ほど答弁したように押付け的な天下りは見直す必要がある」と応えるだけであった。再々質問に立った松本氏はこのことをまた質問したが、安倍首相は紙をみて、「先ほど答弁したとおりである」と繰り返すだけであった。そして最後は「見直す必要があると考えるから、見直すように指示しているのだ」と答弁にもならない答弁をしていた。
一事が万事。憲法問題にしろ、年金問題にしろ、天下り問題にしろ、安倍首相の現状認識というのは、所詮この程度のものなのだ。問題に対する正しい認識がなければ、その対策が有効である筈がない。安倍首相としては、何でもよいから天下り規制と宙に浮いた年金記録の元凶である社会保険庁解体の努力しているというパフォーマンスをしたいのである。その狙いは分かる。そして一定程度それは意味のあることであろう。このようなパフォーマンスに騙される国民もいるのである。率直にいうが、このパフォーマンスの化けの皮を剥がす有効打を野党が出しているとは思われない。これを明らかにするのが、これからの野党の国会における戦いの眼目でなければならない。
天下分け目の戦いといっても、37日間の毎日毎日の局地戦で勝利を積み重ねていくことが大切なのだ。残された国会の場で安倍首相の問題点を徹底的に追及して、一つひとつ戦果を挙げていかなければ最終的な勝利を掴むことはできない。いくら杜撰な法律とはいえ、それ自体は安倍首相や与党の武器になることを見逃してはならない。野党の皆さんは、お人好しの議員が多いようである。平時だったらそれは褒められることかもしれないが、決戦の場においては、それは利敵行為と呼ばれることもあるのだ。否決されることが明らかな内閣不信任案を提出するくらいでお茶を濁してはならない。安倍首相を正面に据えて、論戦で安倍首相を攻めたてることが重要なのである。野党の武器は、寸鉄人を撃つ言葉なのである。明日からの野党の“言葉”に注目しよう。
それでは、また明日。