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fascism はこうしてやって来る。

07年06月20日

No.463

正直に告白しよう。私は一昨日の午前0時過ぎに、6月18日付の永田町徒然草をupdateして外出した。その日(6月18日)は月曜日であったが、私にとっては振り替えの日曜日みたいなもので、終日麻雀をした。例によって、30時間くらいぶっ通しで麻雀に興じて、昨日(19日)の早朝に帰宅しシャワーを浴びた後、同日の永田町徒然草をupdateした。さすがに疲れていたので、書くことは決まっていたがupdateはいつもよりちょっと遅い午前10時41分となった

昨日は、若干の仕事があった。それらを正午までに済まして、午後は一眠りした。夕方には前々からの約束があった。会食をして夜12時過ぎに帰宅した。『報道ステーション』(テレビ朝日)も『NEWS23』(TBSテレビ)もみれなかったので、念のために asahi.com をみた。「民主・内山氏、30日間登院停止 除名に次ぐ重い処分」という見出しの記事が目に入った。私は一瞬「また馬鹿な民主党議員がなにか不祥事を起こしたのか」と錯覚した。不祥事を起こした民主党議員に対して、民主党が党としての処分をしたと思ったのだ。

あまり興味はなかったが、その記事を読んでみた。そして驚いた。衆議院の懲罰委員会が可決していた民主党の内山晃衆議院議員に対する「登院停止30日」の懲罰を衆議院本会議で可決したというニュースであった。この懲罰は自民党・公明党の与党の賛成多数で決まった。民主・社民・国民新3党は採決を欠席し、共産党は反対したという。月曜日、私はまったくニュース・報道の類はみていなかった。しかし、昨日(火曜日)は、新聞を読んでいるし、夜出かける前までテレビのニュース・報道番組はちゃんと観ている。現に昨日の永田町徒然草は、同日の『朝日新聞』の記事を基にして論じたものである。

昨日のニュース・報道は、渋谷で起こった女性専用の温泉スパ施設の爆発事故を大々的に報道していた。渋谷区松濤(しょうとう)は、いうならば私の“縄張り”である。このあたりは、私もときどき“徘徊”している。また私の家内は、スパの大愛好者である。そんなことから徹夜明けで疲れていたが、報道は注意をもってみていた。その中で、冒頭のニュースはまったく報道されていなかった。念のために6月19日付の『朝日新聞』と『読売新聞』を観てみた。両紙とも4面で小さくは扱っていた。これを見逃したのはうかつではあったが、これはその程度に扱われる問題ではないだろう

内山晃衆議院議員について、私はまったく知らない。内山代議士に対する懲罰処分については、リンクした記事に譲る。重複は避ける。この懲罰処分には、大きくいって三つの問題がある。第一の問題は、今回問われた内山代議士の行為は、そもそも懲罰の対象になることだろうか。あの急ごしらえの時効特例法案を衆議院厚生労働委員会でたった4時間の審議で採決しようとしたことに対して、野党議員がこれを阻止しようとした際の内山代議士の行為が問われたのである。あの光景は、永田町徒然草の読者なら一度くらいは見ている筈である。私は国会にいたとき、何度も強行採決を目撃している。かつての強行採決はやる方もこれを阻止しようとする方も、もっともっと激しいものだった

しかし、強行採決の際の行動を懲罰に問うことなど、話題になったこともまったくなかった。いわゆる「強行採決」は、法律を通さなければならない与党とこれを阻止しなければならない野党の双方の立場を考えて、国対関係者があみ出したある種の“セレモニー”なのである。馴れ合いといわれても仕方ないが、ああいうことでもしなければ問題は先に進まない。与党は強引というマイナスイメージを負うことを承知した上で、野党の立場に配慮してあえてあのような“セレモニー”を行って法案を通してもらうのである。日本の議会が産み出した国会対策上のテクニックなのである。だから、強行採決の際の言動が懲罰の対象となることなどなかったのだ。

第二の論点は、懲罰委員会の審議のやり方である。この点について、ほとんど報道されていない。懲罰常任委員会の常任委員長は、民主党の横光克彦代議士である。自社さ政権を作るとき、これに賛成してくれた社会党議員であった。1996年(平成8年)の総選挙のときには、自民党は大分4区で社民党公認候補の横光氏を推薦した。この前、森田実氏の出版を祝う会でも同席して話をした。かつては俳優でなかななの好男子である。私としても直接電話して訊くこともできるが、社民党の保坂展人代議士のWebサイトにすでに書かれているのでこれを引用する。

  懲罰委員会の委員長は横光克彦議員(民主)だ。以前は社民党にいた議員だから、電話して事情を聞いてみた。15日に懲罰委員会を開いて趣旨説明を聞いた。そして、「与野党筆頭理事同士でよく話しあって下さい」と言い続けたという。昨日の18日に横光委員長は、理事会の場で「与野党の意見は一致しましたか。していないのなら、今日は委員会を開けないですね」と言ったとたんに、不信任動機が島村宣伸理事から出され、その後与党のみ出席の懲罰委員会で「委員長不信任決議案」が決められたという。御当人の内山晃議員が一言も発することなく、また懲罰委員会に呼ばれることもなく、「30日間の登院停止」を決めてしまった。横光委員長は、委員長ではあるが、島村代理がいるので委員会を運営することが出来ないという宙吊り状態に追い込まれた。

 そして、今から再開されようとしている衆議院本会議で、内山晃議員の「身上弁明」を聞いた上で、島村懲罰委員会理事が登壇し、「内山晃議員の登院停止30日間」を宣告する。そして、民主党の10分の反対討論の後で採決するという段取りになっている。社民・国民・民主の3党は抗議して本会議場から退席する予定だ。本人の弁明も一切の審議もなく、強行採決された「登院停止」処分など認めるべきではない。

私も衆議院の商工常任委員会の委員長を1年半にわたり務めたことがある。羽田内閣と村山内閣の時代だった。最初は野党の委員長だった。野党の委員長というのは、委員会運営に苦労する。自分が所属する党は、委員会では少数党なのである。しかし、委員会運営に関しては、委員長の権限は絶対なのである。常任委員長は、本会議で選出される。その解任は、本会議でなければできない。その委員長を無視して、自民党の筆頭理事が勝手に委員長を務めて委員会を開催し、懲罰処分を決めるなどということは国会運営上許されることではない。自公“合体”政権の与党が化け物みたいな多数を衆議院でもっているからといっても、こういうことは許されることではない。もしそのようなことをやりたかったら、本会議で横光委員長を解任した上、新たに委員長を選任した上で行わなければならない。それが議会運営の最低限のルールというものである。

第三の論点は、こうした異常な事態に対して自民党内に自制を求める動きがまったくないことである。報道はされていないが、昨日の本会議に欠席をした議員くらいはいたのかもしれない。しかし、それでは安倍首相を中心とする執行部に自制を求めたり、クレームをつけたことにはならない。かつての自民党ならば、こういう執行部に自制とクレームをつける者が必ずいた。そして、そのような動きは、執行部にとって決して無視できないものだった。いまそのような良識を自民党に求めることは、木に登って魚を求めるようなものである。公明党にそのような良識がないことは、いまさら驚く者もいないであろう。自公“合体”政権は制御能力を失ったダンプカーみたいなものである。そしてジャーナリズムもこれを非難しようとしていない。ファシズムはこうしてやって来るのである。野党は命懸けでこれと戦わなければならない。

それでは、また明日。




  • 07年06月20日 07時39分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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