不明な支払い記録!?
07年05月24日
No.435
数日前から5000万件もの誰のものか判別できない年金保険料の支払記録があることが問題になっている。社会保険庁という役所は、よくもまあいろいろと問題を起こしてくれるところだ。しかし、今回の問題は、これまでとはちょっと質が違っているように思う。まさに各人が実際に受け取る年金にも直結する年金の根幹にかかわる問題だからである。
国民年金や厚生年金はもともと別の制度で、国が制度ごとに年金番号を管理していた。転職や結婚で加入先の年金が変わり、複数の番号を持つ人がいる。だが、97年に一人に一つの基礎年金番号を導入する際、国は複数の年金制度に入ったことがある人に氏名や住所など必要事項を記入したはがきの返送を求め、そのはがきに基づいて基礎年金番号への一本化(統合)を進めた。返送がなかった分はそのまま「宙に浮いた年金記録」となった。社保庁はその後も一本化作業を進めてきたが、昨年6月段階でも一本化されていない記録は5095万1103件ある。転職や結婚で「宙に浮いた年金記録」となっているという心当たりがある人は、基礎年金番号をもとに社保庁に調査を依頼できる。以前の勤め先の名称などを手がかりに年金記録が整う場合がある。
(asahi.com 2007年5月23日記事より)
基礎年金制度になってからもう10年が経過した。それなのに5000万件以上も未統合の記録があるというのは、一体どうしてなのだろうか。1998年(平成10年)1月23日私のところにも年金手帳が送られてきた。そこには基礎年金番号と「国民年金の記録」と「厚生年金保険の記録」の一覧表がある。これをみれば、どの期間どの年金に加入していたか一目瞭然と分る。現在ではほとんどの人がどれか年金に加入することが義務付けられているのだから、統合していないとどの期間が未加入であるかは簡単に判るのである。
年金は基本的には請求主義である。そうだからといって、記録上明らかに未加入の期間があることになっている人に対して、本当に未加入なのか(年金保険料を支払っていないということ)、それとも未申告なのかを調査して記録を整えておくことは、社会保険庁が日常業務としてやっていてもバチはあたらない仕事である。社会保険庁から「あなたには、基礎年金の台帳の上では未加入の期間がありますよ」という通知があれば、ほとんどの人が社会保険事務所や市区町村役場に行くのではないか。だいいち、そのようにキチンとしておかなければ、何年度にはいくらの年金を支払わなければならないのか予測も立たないではないか。生真面目な私(?)としてはそう思うのだが、どうなのだろうか。
いずれにしても5000万件の「宙に浮いている支払い記録」の実態を早急に調査して公表する必要がある。実態を正確に把握せずに私も無責任なことをいうつもりはないが、問題になっているのは「年金保険料の支払い記録」である。社会保険庁が受け取った年金保険料の記録である。お金を受け取ったら、それに応じた年金を支払わなければならないのは国の義務なのである。お金を受け取っておいて商品を届けなければ、世間では大騒ぎになる。下手をすれば詐欺に問われることもある。年金の支払は、受け取った年金保険料に対する対価である。受け取りと支払いの間に何十年という間隔はあるが、普通の取引と基本的には同じである。国民は国なのだから支払った保険料をちょろまかしはしないだろうと信じている。だから保険料の領収書などを保存していないであろう。
今回の場合、ちょろまかしはないようだ。だから迷子になっている支払い記録が誰のものか早急に特定することだ。いくらコンピュータを駆使しても名寄せできないものもあるであろう。その場合は、基礎年金の台帳で未加入期間がある人に通知をして社会保険事務所に来てもらう必要もあろう。年金に関するであるから、国民も協力すると思う。「現行の会計法では、年金は5年間受け取らなければ時効により権利が消滅する。例えば、すでに年金をもらっている人に“宙に浮いた年金記録”があり、その分の保険料を納めた領収書を見つけた場合でも、現在の受給額との差額を受け取れるのは申し出た時点からさかのぼって5年分だけ。それより前の分は時効が成立し、もらえない」(asahi.com)という。まあ、こういうミミッチいことはしないことである。「国家の品格」が疑われる。
それでは、また明日。