総選挙で決着を付けるのが正道
15年09月12日
No.1,776
9月に入ってから私は、白川勝彦法律事務所の仕事を終えると、必ず国会周辺を回ってから自宅に帰ることにしている。毎日どのような行動が繰り返されているのかを、この目で確かめるためである。もちろん、時間が許すときは、車を止めてその輪の中に入りもするし、やるべきことがことが済んだら、また車で行動がなされている所に駆けつけることもある。だから、9月のタクシー代はかなりになる。事はわが国の一大事なのだから、それは已むを得ない。
今日も仕事を終え、国会正門前を通ってきた。行動はまだ始まっていなかったようだが、既にかなりの人々が集まっていた。今日は天気も良いし、土曜日だから、相当の人数が集まるのだろう。私は、この永田町徒然草を書くために帰って来た。これを書き終えたら、どうしても行かなければならないところがあるのだ。時間が許せば、私も国会正門前まで行ってみるつもりだ。
9月16日に、地方公聴会が開催されることになった。従って、自公“合体”政権は、9月17日か18日に安保関連法案を採決したいと言っている。来週は、まさに正念場だ。これまで、安保関連法案について、私は、その問題点を多方面から述べてきた。だから、それをここで繰り返して述べようとは思わない。今日述べようと思うのは、この段階で、この問題をどのような手続きで解決するのが正しいか、という点である。
結論から言おう。「もし安倍首相が正道を歩もうというのなら、ここは、解散・総選挙しかない」ということである。この前の総選挙からまだ一年も経っていないのに、また総選挙かと云う人も多かろう。しかし、ここは解散・総選挙しかないのである。前回の総選挙だって、前々回の選挙からまだ満2年も経っていなかった。しかも、争点は、消費税の10%実施を1年半延期することを主とするものであった。
安倍首相は、消費税の実施時期を1年半延期することを問う解散・総選挙に踏み切ったのだ。ふつう、税負担を求める場合には国民に信を問う必要があるが、税負担を軽減する(延期する)場合には国民の信を問う必要がないというのが、政治の一般常識である。しかし、安倍首相は、税に関することは国政の基本であるからと言って、解散・総選挙に踏み切ったのだ。
今回問題となっている安保関連法案の最大の争点は、この法案が憲法9条に違反しているのではないかということである。安倍首相と自公“合体”政権は、問題となっている安保関連法案が憲法に違反するものではないと理屈を並べているが、どれも、専門家ら見たら屁理屈以外の何物でもない。多くの国民(約6割~7割)は、この法案を憲法違反と考えて反対しているのだ。
どちらの主張が正しいかは、最高裁判所が判断してくれる訳ではない。仮に誰かが、成立したこの安保関連法が違憲だといって裁判に持ち込んだとしても、最高裁判所は、統治行為論あるいは政治問題として判断を避けることは明白である。それが、こういう問題に関する最高裁判所の判例である。だから、自公“合体”政権が、「この法案が合憲であるか、違憲であるかは最高裁判所が決めることだ」というのは“まやかし”なのである。
最高裁判所は、「このような問題の決着を付けるのは、国民の意思しかないのである」と、自ら言っているのである。国民の意思をいちばん端的に知ることができるのは、この問題を争点として争われた総選挙しかないのだ。問題となっている安保関連法案がどのような内容であるか、どこに問題点があるのか、それらが、この数ヶ月の国会論戦・報道などでかなり国民に明らかになっている。国民の信を問う環境は、熟している。
事は、憲法9条に関することである。また“国民の命と生活を守る”安全保障に関することである。また、わが国の脅威となっているのはどこの国なのか。その国と、どう付き合っていけばよいのか。“日米同盟の強化”とバカのひとつ憶えのように叫ぶが、アメリカとの関係だけを重視して、わが国の国益がこれからも本当に守られるのか。国民の意見は、多岐多様である。まさに、国民の信を問うに値する問題の、最たるものである。
安倍首相が本当に“戦争を避けるための法案”、“国民の命と生活を守るための法案”と考えているのであれば、ここは、正々堂々と解散・総選挙に打って出て、国民の信を問うのが正道である。そうしておかないと、これから後、憲法違反との国民の異を浴びることになる。そんなことでは、この安保関連法案が企図している役割を果たせなくなるのは、必定である。
現在の政治状況を冷静に分析すれば、安倍首相がここで解散・総選挙に打って出た場合、安倍首相が危惧するような結果になるとは限らない。もし、安倍首相を支持する政党が敗れ、安倍首相が退陣しなければならないことになったとしたら、それは、国民が安倍首相の言を信用しなかったからである。いくら国民のため、国家のためと言っても、国民の信を得られないようならば、仕方がなかろう。安倍首相は、もって瞑すべし。
以上が“安倍首相が正道を歩む政治家ならば、ここは解散・総選挙に打って出よ”と私が主張する、大まかな理由である。安倍首相を支持し、安倍首相と共にこの安保関連法案に賛成する者は、本当にそう確信するならば、“安倍総理。ここは解散・総選挙に打って出て、国民の信を問いましょう”と言わなければならない。そのような気迫と自信がなく、どさくさに紛れて獲得した議席でこの安保関連法案を通してしまおうというのは、裏で良からぬことを考えている卑怯な輩だからである。そう、私は断言する。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。