ドンドン決めりゃ良いのか!?
13年10月19日
No.1613
アメリカの債務問題に振り回された1週間であった。多くの人々が、そして私も予想していたように、結局は、最後に妥協が成立した。しかし、オバマ米大統領は、簡単に妥協しなかった。共和党は、オバマケア(国民医療保険制度)の変更を強く求めた。私が指摘しておいたように、これはオバマ米大統領と国民との約束なのであるから、そう簡単に妥協できるシロモノではないのだ。リベラルなオバマ米大統領にとって、貧困者に最低限の医療を保障する政策は、譲ることのできない理想なのであろう。
わが国のマスコミは、今回の動きを“決められない政治”と揶揄していたが、わが国で流行っている“決められない政治からの脱却”とはいささか次元が違う動きであったと、あえて私は指摘しておきたい。アメリカでの、国民全体を対象とした医療保険制度が整備されていない現状の改革は、アメリカの多くの識者が主張していたのである。他の先進国からみても、アメリカの現状は改革されるべきであるという意見が多いのだ。
わが国では、このところ“決められる政治”が
消費税の増税も、そういう問題だった。わが国の税収の中で、消費税が占める割合は、先進国の中でもかなり高い方である。消費税の増税を主張する人は、わが国の消費税の税率が諸外国に比べて極めて低いことを強調するが、税収に占める割合こそが、問題の本質なのである。所得税・法人税・資産税・相続税・消費税などのバランスをどうするかは、その国の理想と理念が如実に表われる政治問題なのである。
ほとんど国会で問題が本格的に議論されることなく決まった“マイナンバー制度”なども、わが国が自由主義社会であるかどうかに関わる重要事だと、私は思っている。徴税の公平さは極めて重要だが、そのために個人の自由が侵されては断じてならない。そもそも、一般に指摘されるように、わが国の徴税はそんなに不公平なのだろうか。わが国の税務当局は非常に大きな権限をもっており、徴税の不公平は、言われるほど酷い状況ではない。
マイナンバー制度の導入による税務当局の更に大きな権限を獲得の方が、遥かに恐ろしい。資本主義社会において、おカネの流れを掌握されるのは、その個人のほとんどの行動を国家が掌握することになるからだ。その結果、国家は国民を管理しやすくはなるだろう。しかし、自由主義社会の“第一義”は、個人の自由が保障されることである。国家が個人の情報を掌握している場合、国家は必ず個人の行動に
自由主義は、国家=権力に対する猜疑から出発した。民主主義もそうである。自由主義者としての私は、だから、個人の自由を阻害しようとする動きに極端に
中曽根内閣の時に、自民党内で『スパイ防止法案』が提出されようとした。この時、私は仲間と共に反対し、これを阻止した。これは非常にきつい闘いであったが、自民党内にはまだ、私たちの動きを助けてくれるリベラルな勢力がいた。しかし、今はもう無理であろう。特定秘密保護法案が成立した時、わが国の自由は極めて危うくなる。国家を運営する上で秘密があるのは仕方ないが、そもそも、秘密を守れない者に秘密を管理させること自体が問題なのだ。実に、単純である。【永田町徒然草No.1164「鳩山由紀夫 リベラルの証明」に記載されている「スパイ防止法案について」を参照されたい。】
マスコミは、報道の自由・知る権利の面から、特定秘密保護法案に関心を持っている。しかし、現在のわが国のマスコミに関していえば、彼らの問題意識が低過ぎて「マスコミの知る権利・報道の自由」が保障されたとしても、国民は安心などできる筈がない。この法案について、ジャーナリストの田中良紹氏が「公明党の二枚舌」の中で、極めて適切な視点から反対している。参考になるので、ぜひご覧いただきたい。田中氏と私は、旧知の仲である。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。