選挙は“水もの”!?
12年12月08日
No.1542
真冬並みの寒さが、日本列島を襲っている。そんな中で、総選挙が行われている。300の小選挙区に立候補した人数は、過去最高だという。その原因は、多数の政党が誕生したからである。小選挙区に多数の候補者が乱立すれば、有利になるのは、相対的に自力のある政党である。自民党は、腐っても鯛である。そのうえ、今回の総選挙でも、自民党と公明党は一体となって戦っている。自民党の安倍総裁も、公明党の山口代表も、公明党と自民党をハッキリと“友党”と言っていた。自公“合体”は、依然として変わっていない。当然のことながら、情勢は有利となる。
民主党は、多数の離党者を出したものの、自民党に次いで多くの候補者を擁立した。しかし、マスコミの報道によれば、相当に苦戦しているという。それは、マニフェストに反する消費税の10%増税の法律を、自公と一緒に成立させたからである。民主党に対していろんな批判はあるが、やはり、最大の非難はここにあることを、民主党の立候補者は、寒風の中で肌身に沁みていることだろう。「社会保障費をキチンと確保するため」といくら叫んでみても、国民は聞く耳を持つまい。
野田総理や安倍総裁たちが、消費税増税の必要性をどんなに力説しても、国民の多くは今なお、心の奥底では反対している。従って、「消費税の10%増税反対」を掲げる政党が大同団結して、300の小選挙区に立候補者を擁立すれば、消費税の10%増税の法律を成立させた自民党も、公明党も民主党も、苦戦している筈である。私は、そのような構図が解散・総選挙までに作られればと期待したが、残念ながら、それはできなかった。
第三極と称される政党が、本当に自公や民主党に対抗するつもりならば、消費税に対する態度は明確でなければならない。マスコミが盛んに持ち上げ、最終的に日本維新の会となった勢力の主張は、最初からその点でハッキリしていなかった。いまでも、「地方税化する」などというものである。いま問題になっている「消費税の10%増税」に賛成なのか反対なのかは、いまもって分からない。それ以外の第三極と称される政党は、この点に関しては反対であるが、この一点で大同団結している状況ではない。
今回の総選挙の争点として新たに浮上してきたのが、原発とTTPである。本当にこれらの問題が、今回の総選挙の争点に相応しいかどうかは疑問であるが、敢えて、それは問わないこととしよう。しかし、これらが第三極の存在理由を曖昧にしているのは、現実である。第三極と称される政党の立候補者数を合計すれば300人以上になるが、自民党・公明党連合と民主党に対抗する形で300選挙区に擁立されている状況にない。
選挙は、“水もの”と言われる。しかし、300の小選挙区の“選挙の構図”によって、大勢は決せられる。300の小選挙区にそれなりの候補者を擁立する作業(仕事)は、実に大変なのである。平成8年小選挙区制で初めて行われた総選挙において、自民党の総務局長としてその任にあたった私は、それを、嫌というほど知っている。自民党でも大変なのであるから、新しく結成された政党にとっては、想像を絶するほど困難な作業である筈だ。
長い間選挙というものに携わってきた者にとっては、選挙は、決して水ものではない。だから、現在マスコミが予測しているような選挙情勢であることは、およそ理解できる。しかし、選挙情勢は最後の最後まで分からないところがある。基本情勢は、選挙の構図からいって、残念ながらもう、どうにもならない。しかし、まだ決まっていないところもある。そこに、各政党や各候補者は全精力を傾注して闘う必要がある。そこが、これからの見どころである。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。