究極の社会保障とは
12年02月12日
No.1536
永田町徒然草を書くのが週1ペースになってから、もうかなり経つ。日々いろんなことが起こっているので、永田町徒然草に書いたことが、もう関心事でなくなっていることもある。しかし、そのような話題は、所詮、たいした問題ではないのだ。私も、それなりの経験があるので、そのような話題については、できるだけ、永田町徒然草での言及を避け、１ケ月くらいは関心があるであろう問題を、取り上げてきた。
いま、国会では、平成24年度予算案が審議されている。通常国会冒頭の国会論戦は、嘗ては、政治論戦の花だった。しかし、最近、国会の報道は増税のニュースばかりだ。野田首相は「社会保障と税の一体改革」というが、社会保障といえば、増税が許されるとでも思っているのだろうか。増税は、どんなに理屈を並べようが、国民にとって苦痛なのだ。苦痛を甘受する国民など、そもそも、どこの国でもいないものである。
私は、今年に入ってから、「究極の社会保障は、税金を取らないこと」と思うようになっている。税金とは、国民の労働の成果である所得から、権力が一方的にお金を取るものである。それは、国家だけができる権能である。しかし、その権能があっても、それを行使するかどうかは、その時々の権力と国民の闘争の結果であった。野田政権は、社会保障を理由に増税を強行しようとしているが、果たして国民は、それを許すのだろうか。
不支持率が支持率の倍以上ある野田政権に、増税法案を通すことなど、できる筈がない。増税法案に賛成した政党や議員は、次の選挙で国民から強く非難される。選挙では、猛烈な逆風に晒される。それは、経験したものでなければ分からない。私は、平成2年の総選挙で、それを体験した。いわゆる消費税選挙である。私は、その選挙で落選した。しかし、そのことは後悔していない。その選挙によって、消費税はわが国の税として定着した。
平成2年の消費税選挙の大義名分は、“直間比率”の見直しだった。それまでのわが国の税金は、所得税や法人税などの直接税に、あまりにも偏重していた。そのため、税金を納めない人がかなりいた。広く薄く納税をして貰うという公平性と、直接税中心に起因する税収の不安定性の解消が目的だったのだ。前者は、課税最低限の引き上げであった。後者は、景気の動向によって左右される税収を、安定化することであった。このうち前者は、多くの国民の非難の的だった。
今回は、社会保障を確保するために、消費税を大幅に引き上げるという。社会保障で受益する者は、所得の低い人々である。「社会保障を大義名分にすれば、所得の低い人々からも理解が得られであろう」と、野田首相や民主党の幹部は考えたのであろう。社会保障は確かに必要だが、年金制度や医療保険などをみれば明らかなように、役人の行う社会保障の効率は、決して良くない。
国家が行う社会保障そのものに多くの無駄があり、社会保障そのものがすでに破綻していることを、多くの国民は気が付かなければならない。憲法25条から始まった生活保護制度も。役人にまかせておくと、現在のようなモノとなってしまうのだ。社会保障以外、権力にどうしてもやって貰わなければならないことは、ごく限られている。権力が容喙しなくてもよい分野に権力がしゃしゃり出て、無駄なことを行っているモノは、山ほどある。
社会保障に限らず、公の行いの、厳しい見直しが必要である。そうすれば、税金をわざわざ使わなくてもよいことが山ほどあるのに、国民は気が付くであろう。「社会保障と税の一体改革」などという大義名分は、そもそも胡散臭いのだ。私は、リベラリストである。リベラリズムは、自由主義である。自由主義は、権力に対する猜疑から始まった。今回の増税問題への対応は、論者のリベラリズム＝自由主義に対するリトマス試験紙である。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。
